ZENITH ゼニス クロノマスター リバイバル シャドウ 97.T384.4061/21.C822
2022/12/27
ゼニス プロトタイプ 復刻版
ゼニスZENITH クロノマスター リバイバル シャドウは、1969年に今では著名なムーブメントである エル・プリメロ を搭載した最初のモデルである Ref.A384 が発表された翌年の1970年に登場した“名前やリファレンスナンバーさえなかった”プロトタイプモデルの復刻版である。
当時では珍しいステンレススティール製ケースにブラックのPVDコーティングがなされており、手巻きクロノグラフキャリバーを搭載したモデルであったが、1969年に日本の「セイコー」が発表した世界初のクォーツ時計「アストロン」の登場によるクォーツショックで、ゼニスのステンレススチール製モデルは市場にはほとんど出回らず歴史に埋もれてしまった幻の時計となってしまう。
クォーツショックによるゼニスの買収から図面や金型の廃棄を命じられたが、当時ゼニスの技術者であった「シャルル・ベルモ」が、その命令に反し150種類にもおよぶ工具や図面・金型を靴箱に積め工場の屋根裏に隠したことで現在のゼニスがあるわけだが、その屋根裏に隠した図面のなかにプロトタイプモデルが発見され、今回紹介する“クロノマスター リバイバル シャドウ”の発表へとつながっていくこととなる。
「シャルル・ベルモ」の功績やゼニスの歴史に関してはこちらに詳しい
ZENITH ゼニス クロノマスター リバイバル シャドウ
ゼニスは「エル・プリメロ」ムーブメントが発表された1969年から50年の時を経て、2019年に1969年の復刻モデルをいくつか発表したが、翌年の2020年にプロトタイプモデルは“クロノマスター リバイバル シャドウ”と名づけられ、1年前に発表された1969年発表のRef.A384 の仕様に基づいてケースは37mm(プロトタイプは41mmであった)となり、材質もステンレススチールからチタン製となっている。
クロノマスター リバイバル シャドウ は1970年発表当時、ステンレススチールにブラックPVD加工されたモデルであったが、マイクロブラスト加工されたマットブラックのチタン製となったことで、チタンの材質とテクスチャード加工がされたラバーストラップにより全体的に軽量となっている。
デザインは37mmというケースサイズと光をほとんど反射しないダークな色合い、スネイル仕上げの3つのサブダイアルは、9時位置にスモールセコンド、6時位置に12時間積算計、3時位置に30分積算計が配置され、クロノグラフのタキメータースケールはグレーをベースに白文字で外周部分に記載されている。
文字盤のマットブラックと白いクロノグラフ秒針、サブダイヤルの白い夜光プロットなど、黒とグレーと白のバランスがよくとれていてビンテージモデル感を盛り上げるデザインとなっており、針とアワーマーカーはロジウム加工が施され、スーパールミノバが塗布され暗所でも明るく浮かび上がる。
ムーブメントはプロトタイプで搭載されていた手巻きクロノグラフキャリバーから、ゼニス「エル・プリメロ Cal.4061」が搭載され、エルプリメロ本来の毎時3万6000振動で、約50時間のパワーリザーブを誇り、Cal.4061はガンギ車とアンクルにシリコン素材を採用したゼニスの最新ムーブメントであり、ケースバックのスケルトン仕様から眺めることができる。
50年前にプロトタイプとして製造されたモデルの復刻版ではあるが、一見して古臭さは感じられず、むしろ現代で流行りの“艶消し”を採用したこともあって、クラシカルな雰囲気を保ちつつ渋さを醸し出してくれるモデルといえ、クォーツショックからゼニスを救った「シャルル・ベルモ」の逸話を知れば、日の目を見ることのなかった幻のモデルに興味を持ってもらえるのではないだろうか。