ロレックスの個性的な文字盤 アイゼンキーゼル マラカイト ターコイズ
2023/07/13
ロレックスを知る読者でれば、時計の“顔”ともいえる文字盤に興味が沸いたことがあるのではないだろうか。
ロレックスでは、今回の記事のような天然素材以外にも、タペストリー、ホリコン、ピラミッド、グラデーション、コンセントリックなど、様々な文字盤があるわけだが、時計の“顔”である以上、時計選びでは重要な要素であるといえ、この記事では天然石文字盤の代表例としていくつか紹介させていただく。
アイゼンキーゼル ダイヤル
アイゼンキーゼル(Eisenkeisel)は鉄水晶または赤水晶と呼ばれる酸化鉄を含む繊細な縞模様のある水晶で、ベースとなる赤色は結晶自体の色ではなく、結晶の隙間に不純物として含まれている酸化鉄(赤鉄鉱)の色であり、希少な水晶ではないものの産地により赤色が強いものや形状も様々であり、スペインやモロッコなどが産地として有名である。
今回の参考で ROLEX ロレックス デイデイト 36 Ref.128235 に採用されている アイゼンキーゼルダイヤル は、2021年から登場した、比較的新しいダイヤルデザインで、40mmと36mmで使用されているが、微妙にデザインが違うことも特徴といえる。 ※画像は36mm
36mmでは、アイゼンキーゼル のブロックからダイアル用の円盤状に切り出し、真鍮の文字盤ベースに接着し、18ctゴールド(24分の18 75%が金で25%が他の金属)のアワーマーカーに32個のブリリアントカットダイヤモンド、ローマ数字の VI と IX に24個のブリリアントカットダイヤモンドを埋め込んだ、大変手間のかかった造りのダイヤルといえる。
見る人によって、稲妻や“赤水晶”といわれるだけに血管の網羅にも見えなくもないが、水晶は1ミリ伸びるのに100年以上かかるといわれており、文字盤の大きさに成長するまでに何万年の歳月が必要だったかを想像するだけでその希少性が理解できる。
ちなみに アイゼンキーゼル の宝石言葉は「勝負事」「内なる情熱」「気力体力の回復」という意味があるそうだ。
マラカイト ダイヤル
マラカイト(Malachite)は光沢のある緑色と縞模様が特徴的な天然石で、色と模様が孔雀の羽に見えることから、和名では“孔雀石”と呼ばれ、銅鉱物が大気中の二酸化炭素や地下水に触れることにより風化し、例えるなら銅製品にできるサビの“緑青”の主成分が形成され集合体になったものがマラカイトである。
紀元前2000年ごろのエジプトでは宝石として利用されており、マラカイト の粉末は、顔料(岩絵具)として「クレオパトラ」がアイシャドーに使っていたことは有名で、現代でも美しい塊は研磨され貴石として扱われ、アクセサリーなどの宝飾に用いられている。
主な原産地はロシアのウラル山脈や南アフリカなどが有名で、日本国内でも秋田県中央部の「荒川鉱山」では良質の原石が採取されており、FIFAワールドカップのトロフィーの装飾として マラカイト が使用され、古代から時代を問わず重宝されてきた天然石でもある。
ロレックス Ref.128238 における マラカイト 文字盤は、2019年に登場し アイゼンキーゼル ダイヤルと同じく比較的新しいダイヤルといえるが、天然鉱石を使用した文字盤自体がロレックスでは珍しく、マラカイト には浄化作用と癒し効果を持つとされ、色彩もさることながら縞模様の美しさから、時計のオンリーワン性を高めることは間違いない。
ターコイズ ダイヤル
ターコイズ(俗にいうトルコ石)は青色をベースとした黒や茶色の葉脈状の模様がある天然鉱石で、含有される銅や鉄などによって色合いに違いがあり、数千年前から「神が宿る石」として装飾品に利用されている。
ターコイズは、その爽やかな青色の色彩によりポシティブな宝石言葉をもち、「成功」「繁栄」「安全」などの意味があり、人と人をつなぐ石としても有名で、ターコイズをプレゼントすることで、石のパワーを両者に与え相乗効果が期待できるという。
ターコイズ文字盤は、2000年代初頭に ロレックス デイトナ “ビーチ”シリーズで初めて登場し、ロレックスがターコイズ文字盤を市場に控えめにリリースしてきたこととで、今では非常にレアな文字盤であるといえ、ターコイズ文字盤に限ることではないが、天然石の文字盤は一つ一つの表情(石目)がそれぞれ異なり、ロレックスの厳しい美的基準にあう色合いと構造のものだけが選ばれ、ロレックスモデルにユニークな個性を与えているといえる。
ロレックスの天然石文字盤は、市場に出てくる機会も少なくなり、デイデイト人気もあって、近年では特に海外市場における価格上昇の傾向がある。
次回の記事では、ホワイトシェル メテオライト ルベライト 文字盤の記事を紹介しようと思う。