セイコー SEIKO グランドセイコー エボリューション9 コレクション SLGA009 9RA2-0AB0
2022/07/13
グランドセイコー その歴史と発表
「グランドセイコー」時計愛好家でなくとも日本人であればその名前は聞いたことがあるのではないだろうか。そのグランドセイコーの頭文字をとった「GS」のイニシャルでも表現されるこの時計の歴史を話しておきたいと思う。
「グランドセイコー」は時計メーカーである「セイコー」が開発した時計であるが、「セイコー」の正式な企業名称は「セイコーホールディングス株式会社」であり、1969年に世界で初めてのクォーツウォッチである「アストロン」を発売し、従来の機械式時計から電池式の時計を世界的に広げ(クォーツショック)た企業である。
クォーツ時計で世界的に有名な企業ではあるが、1896年(明治29年)頃には自社で初めての懐中時計である「タイムキーパー20型」を発売するなど機械式時計も古くから製造販売しており、1960年(昭和35年)に「世界に挑戦する最高級の腕時計を作る」というコンセプトのもと「グランドセイコー」は発表されている。
ちなみに販売金額は当時の大卒の初任給の2倍にあたる25,000円。
1964年の東京オリンピックでは公式時計として採用されている。
グランドセイコー その世界の頂点といえる機械式時計の精度と信頼
その後、1964年よりスイスのニューシャテル天文台とジュネーブ天文台が主催するクロノメーターコンクール(当初は順位発表有り)に初参加し、4度目の挑戦で「Cal.052」の出展をもって第2位の順位を獲得したが、同年のコンクールでは検定途中での順位は発表されず、参加企業だけに順位が伝えられた。
その理由については出展上位をセイコーが独占したためスイス時計メーカーの面子があったのではないかといわれており、ニューシャテル天文台のコンクールはその後開催されなくなり、ジュネーブ天文台のコンクールでは1968年にセイコーが機械式時計が総合順位4位~10位を独占(1位~3位はスイスのクォーツ式時計)したことで1968年以降にコンクールは一度も開催されていないため、セイコーの機械式時計は実質世界一の精度であったといえる。
また、170年の“天文台コンクール”において、日本人である“中山きよ子”が女性として初めての出品者(時計の調整者)であったことを伝えておきたい。
その後、セイコーは「スイス公認クロノメーター検定協会」に検査を依頼し高い合格率を達成、1969年から1970年にかけてはクロノメーター検定に合格した153機の「Cal.4580」を、「45グランドセイコーV.F.A」として発売し「グランドセイコー」が機械式時計としての精度と信頼性で世界の確固たる地位を確保したこととなる。
生産当初は「クロノメーター」をうたっていたものの、スイスの公認試験を直接受けていない製品が「クロノメーター」を名乗ることにスイスから批判が出たため、セイコーは「クロノメーター」名称を捨て、自社でさらに厳しい規格である「GS規格」を制定(日差:-3~+5秒以内・姿勢差:6姿勢・検査期間:17日 スイス公認試験より日差+-1秒・姿勢+1・期間+2日)し、現在ではセイコーが販売する全ての製品が「GS規格」をクリアし、初期不良発生0%という圧倒的な品質を保っている。
グランドセイコー エボリューション9 コレクション SLGA009 9RA2-0AB0
日本が誇る「グランドセイコー」の信頼性と精度は理解していただけたかと思うが、「グランドセイコー エボリューション9 コレクション」は、「グランドセイコー」発売当初からの普遍的なデザインといえる太めの時針と細く伸びる分針の組み合わせは変わらず、メーカーで発表している「光と陰が織りなす美」「光を美しく流す造形」などの日本の美意識を採り入れた「白樺の林をモチーフ」としたデザインである。
シンプルな文字盤に白樺の「木」をモチーフとしたわけだが、これはセイコーの機械式時計が生産されている岩手県 雫石市にある「グランドセイコースタジオ」から望める、白樺林を文字盤装飾に落とし込んだデザインといわれており「THE NATURE OF TIME」(時間の自然・時の性質・時間の本質)の理念を掲げる「グランドセイコー」が時計づくりを通して実現したモデルといえるだろう。
ムーブメントは文字盤に刻まれた「SPRING DRIVE 5DAYS」に記載がある“5DAYS”から読み取れるように約120時間(5日間)のパワーリザーブを実現し、搭載されているムーブメントである「Cal.9RA2」はクォーツに続く、第3の時計駆動方式といえる「スプリングドライブ(SPRING DRIVE)」であり、この「スプリングドライブ」を生産できるのはセイコーだけである。
「スプリングドライブ」は機械式ムーブメントの基礎である動力源のゼンマイを使用しながら、巻き上げられたゼンマイは針を動かすと同時に発電も行い、その電力によって水晶振動子を備えた調速機構を動作させることで、クォーツ時計で使用される電池が不要であるにもかかわらず、クォーツ時計と同等の高精度を実現したセイコーが27年間もの歳月を費やし開発した優れたムーブメントであり、某スイスの高級腕時計メーカーから「スプリングドライブ」の供給を打診されたがセイコーは断ったといわれる理由もうなずける。
「グランドセイコー」は、決して派手な時計ではないが、上品でシンプルなデザインとして普遍的な姿勢を踏襲しつつ、自社に厳しく常に最高の精度と信頼性を追求した製品を提供し続けてきたことは特筆に値する。
ブランドコンセプトである「最高の普通」「実用時計の最高峰」を達成し“世界に誇る日本の技術”を世界に知らしめた「グランドセイコー」。
世界時計のコレクションとして手に入れておきたい逸品といえるだろう。