【世界限定250本】BREGUET ブレゲ タイプXXI 3815 3815TI/HM/3ZU
2024/10/25
ブレゲと航空業界の関わり
ブレゲといえば時計製造技術の集大成といえる時計メーカーであり、創業者である“アブラアン-ルイ・ブレゲ”は、現在の時計技術を辿れば“ブレゲ”にたどり着くといわれるほどの発明を残した人物であるが、その曾孫である“ルイ-シャルル・ブレゲ”は時計職人とは別の航空業界に転身したことを知る人は少ないのではないだろうか。
“ルイ-シャルル・ブレゲ”は、フランス航空界の先駆者の一人といわれ、1911年には「ブレゲ航空機」を設立、第一次世界大戦では偵察機や戦闘機、爆撃機などを生産し、第二次世界大戦では、偵察・戦闘・爆撃・地上攻撃までこなす双発のマルチロール機である“ブレゲー 690”を開発したが、1940年6月22日のフランス降伏により生産停止となったものの戦後は航空機生産を再開し、1971年に“ダッソー社”と合併して“ダッソー・ブレゲー社”になるまで存続することとなる。
著名な航空メーカーでフランスのフラッグ・キャリアでもある“エールフランス”の母体の一つとなった“フランス航空郵便社”を1919年に設立したのは彼であり、時計工房は20世紀初頭に孫の“ルイ クレマン・ブレゲ”が継承したが、彼は電気通信で成功をおさめ、電機事業に専念するため、1870年に工房で働いていたイギリス人時計師“エドワード・ブラウン”に時計工房を売却することとなったが、ブラウン家は“ルイ シャルル・ブレゲ”との繋がりを維持し、「ブレゲ航空機」で生産される航空機のコックピットには“ブレゲ”の時計が搭載されていた。
“ブレゲ”は同時に航空機に不可欠である距離計算、燃料消費量、飛行経路計算などに有効な「クロノグラフ」搭載時計を製造し、当初はコックピットに搭載した時計であったものの、1935年にはフランス軍の要請もあってクロノグラフ搭載パイロットウォッチを製造し、今回紹介する「タイプXXI 3815」に繋がっていくこととなる。
BREGUET ブレゲ タイプXXI 3815 3815TI/HM/3ZU
1954年、ブレゲは「ブレゲ航空機」とつながりの深い「フランス海軍航空隊」の要望により、パイロットウォッチのデザインをベースとし、ステンレススティールケース、ブラックダイアルに蓄光性の針、操作が簡略なフライバッククロノグラフ(フライバックは4時位置のリセットボタンを押すと、計測がリセットされると同時に次の計測がスタートする)機能を搭載した初めての軍用腕時計である「タイプ20」を製作することとなる。
4年後の1958年にはパイロットの要請から、3時位置の積算計を従来の30分から飛行前の航空機チェックのために15分に置き換えられ、1960年までに500本が生産されている。
その後、軍用時計の機能は継承しつつ、ベークライト製回転ベゼル、アラビア数字を配した民間用モデルが「タイプXX」の名称で登場し、クォーツショックにより生産終了となったものの、1998年に発表された「タイプXX トランスアトランティック」では、6時位置のサブダイヤルにデイト表示を追加、2016年にヴィンテージスタイルで発表された「タイプ XXI 3817」にあっては3つの積算計を配置しつつ現代風のデザインとし、シリーズ初となるケースバックのサファイアクリスタルによりシースルーバックが採用される。
今回紹介する ブレゲ タイプXXI(トウェンティワン) 3815 では、前作で6時位置にあった12時間積算計を廃止し、ミリタリーモデルであった初期デザインに回帰し、大きめのアラビア数字と幅広の針には蓄光塗料が施されており、視認性とデザイン性を両立した個性的なデザインとなっている。
ブラックの両回転ベゼル、42mmのケースはチタン製となっており、ねじ込み式リューズにより100m防水機能を達成しており、前作から採用されたスケルトンケースバックからは、限定250本モデルのために特別な仕上げが施されたホワイトゴールド製ローターが鑑賞でき、シリコン製脱進機や“ひげゼンマイ”などのブレゲが達成した最新技術が採用されているムーブメントである Cal.584Q/A を眺めることができる。
1935年という早い時期にクロノグラフ搭載の腕時計を発表したブレゲ。
1980年代初頭までフランス空軍とフランス海軍航空隊で使用されてきた「タイプXX」シリーズの復刻版である本モデルは、世界限定250本ということもあり、ミリタリーファンであればなおさら、ヴィンテージスタイルの時計愛好家であれば“クロノグラフの歴史を語る時計”を手にとってみてほしい。